東京湾岸エリアの資産性⑥~「発展途上『街』のリスク」~

東京湾岸エリアの開発は目覚ましいものではあり、デベロッパーは単価を釣り上げるべく「街の発展を楽しむ」ことまで売りにしてマンション供給を続けています。
こうした湾岸エリアの売りは、果たして本当に「売り」になるのでしょうか。
以下に記載の通り、結局マンションデベロッパーの「騙し文句」でしかありません。

■現況が不便なのに高い

現況では、湾岸エリアは朝ラッシュ時の過剰な混雑、保育所の慢性的な不足などが指摘されており、増加する高層マンションに対して整備が追いついていませんが、
そうしたエリアにさらに押し込むようにマンション供給を続けており、街の発展と利便性のバランスが全く取れていない状態です。
晴海地区に至っては、オリンピック選手村がそのまま中古住宅として分譲や賃貸に出されるという計画があり、約1万2000人分もの住居が市場に供給され、周辺エリアの不動産価値下落を指摘する声もあります。
既に成熟した住環境を擁した山手線内側地区に対して、あらゆる面で発展途上である街を悠長に発展期待で住めるほど人間の寿命は長くありません。
■発展は保証されていない
豊洲市場問題とそれに伴う交通網整備の遅れに見られるように、今後の発展材料が材料のまま間延びし、
いつまでたっても中途半端な街であり続けるリスクもあります。
こうした「発展後を見越した気の早すぎる居住」は、非常にリスクが高く、とても合理的とは思えません。
■発展の楽しみは湾岸エリアの特権ではない
湾岸エリアの発展、特にオリンピックに向けた開発が著しいのは間違いありませんが、
何も街の発展は「発展途上街の発展としての湾岸エリア」だけではなく、「成熟したエリアがさらに進化する」案件がいくつもあり、
発展を見届けながら豊かに暮らせる場所は他にいくらでもあります。
直近の開発だけでも、以下の通り東京都心は開発ラッシュに湧いています。
・大手町再開発計画(三菱地所)
・日比谷、八重洲開発(三井不動産)
・竹芝再開発(東急不動産、他)
・山手線新駅開業に伴う品川・田町駅周辺の大規模開発、
・六本木(森ビル)
・渋谷地区の再開発(東急電鉄)
・虎ノ門、愛宕、麻布台エリア(森ビル)
メディア、百戦錬磨のデベロッパーのウリ文句に騙されないようにするためには、「歴史を知ること」「現在の状況を客観的に把握すること」で、自分なりにその価値を分析して合理的な価値か冷静に考えることが大事です。
追伸
連載記事形式で湾岸エリアの資産性を考察しましたが、「現状のデベロッパー提供価格は明らかに実質価値から乖離している」ことを示すものであり、その土地そのものの価値が無価値であるという主張ではありません。湾岸エリア勃興時の豊洲の価格はこなれていましたし、提供価値に対して価格が妥当でした。(当時の購入者は大きな利益を上げていることでしょう。)
あくまで現在の価格水準が冷静に考えて妥当か?という観点で見ており、「あり得ない水準である」ことを示したものです。

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