インフレを巡る議論を少し整理してみる

なぐり書きシリーズです。例によってわかりやすさは重視していません。
でも、確実にヒントは隠れています。

近年の日本はデフレだったのか

突然ですが、近年の日本はデフレでしょうか、インフレでしょうか。
そこそこの人が、デフレって答えるんじゃないかな。
そもそもインフレ率って定義が曖昧だったりするのですが、メジャーどころの1つである消費者物価指数の前年比で見ると、
実は2013年以降はほぼプラス推移していて、物価が段々と落ちていくという意味でのデフレはもう起こっていないです。

ただし、その値はせいぜい1%近辺で0%近傍を脱しておらず、日銀が目標に掲げる2%の継続的な物価上昇には遠く及びません。

物価に影響する要素をガサっとあげると、以下。

・人々のインフレ予想(マインドなので、アンケートだったり、物価連動国債をもとにした指標だったり)

1%前後で横ばい

・需給ギャップ

2013年以降は、意外にもプラスであるとする調査が多い。

・為替相場や資源価格(ひいては輸入物価)

輸入物価は上下動あるので趨勢は語れないものの、0%を上下20%ほどで周回している。

なんとなく、要素だけ見てみると悪くなさそうだけど、なかなか物価が上がらんと。個別に見ていく。

インフレ予想について

日銀が2%の物価上昇を強くコミットしているにも関わらず、インフレの予想はせいぜい1%。
これは、どちらかと言えば需要側の物価への態度であるが、どのような要因が考えられるだろうか。

個人の経験

結局はマインドなので、個々人の経験に基づいて人々は今後の見通しを語る。
闇クマのような若年日本人からすると、物の価格が上がっていくなんて感覚、確かに無いよね。
(最近にわかに「おや?」と思うこともあるけどね)

社会通念

人々に影響を与える社会的な規範。
今回で言うと、日本において物価は大幅に上がることなく、どちらかといえば「待てば下がるものである」という社会通念。

認知を改めない行動

経験や社会通念と関連するが、マインドを改める行動を取らない故に、過去の経験や社会通念に基づく予想をしている。
つまり、上記のような「基調的なインフレの香り」を察知していない人々が多いほど、社会全体のインフレ予想は低く抑えられるということ。

労働市場の状況

以上は需要的側面から見た整理だが、供給側から見るとどうだろうか。
日本の悲しいところで、有効求人倍率は高まり、失業率も2%台半ばに留まっているにも関わらず、賃金が上がらない。
名目賃金はほとんど伸びていない。
ただし、非正規と正規雇用の別で見ると、非正規雇用は直近で2%台で相応に賃金が上昇しているが、
正規雇用者は0%台で、正規雇用者への労働分配が頭打ちになっていることが見て取れる。

賃金が上昇しない理由

賃金が上昇しない理由は多く検証されているが、日本の長期雇用と賃金保証の考えが指摘されることが多い。
即ち、長期雇用の前提のもと、一度賃金を上げたら容易には下げられないなかで、メリデメの見合いで結局賃金水準が維持されていると。
また、女性や高齢者の労働参画による単純な供給の緩みも指摘される。
労組の影響力も世界的に低下しており、日本も例外ではないし、
組合労働者と非組合員の賃金上乗せ率は、同一労働同一賃金の旗印も相まって縮小傾向にある。
と、悪いことばかりつらつら書いたが、そもそも人は働かなくなったという側面もある。
実は、日本の労働生産性の伸びは、2010年から2017年比において世界でもトップクラスだったりする。
IT投資により、労働が節約されている面もあり、時間外労働は現象傾向。こうした背景もあり、賃金がある種良い意味で抑制傾向となっている面もある。

より直接的な供給側の事情

直接的な供給事情を見ても、物価が上昇しづらい側面を理解できる。

インターネット販売の拡大

ネット通販の拡大により、いわゆるサーチコストが消費者も企業も減少していることに伴い、価格下落圧力にさらされているという話。
やや局所的だが、格安スマホ、格安料金プランなどで、携帯電話通信量は大きく下落している点も良く指摘されるところだ。

グローバル化の進展

グローバル化の進展は競争の激化でもある。
似たような製品の中国製が安く売られていたら、そちらを選好する消費者も多いだろう。
なお、為替パススルー率は上昇しているとの研究がある点は注意が必要だ。

公共料金や家賃

日本においては、公共料金の規制価格による抑制、家賃の抑制も指摘されている。
この点は、公共料金については人口減少と設備劣化による価格転嫁、賃料に関しても上記のインフレ予想に基づく値上げの兆しなど、
現状低位で推移しているものの、インフレの芽となるような要素があることも事実である。

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