住宅ローンの基礎をまとめる~変動金利基礎編①~

住宅ローンに変動金利、固定金利があることは周知の事実ですが、
それぞれの金利水準がどのように決まっているか「しっかりと」ご存知の方は少ないのではないでしょうか。

いまやネットで総支払額含めた比較ができ、住宅ローンに対する理解がなくてもそれなりのローンを選べるようになりました。
ただ、それぞれのライフスタイルや人生設計、マクロ経済の見通しによって最適な住宅ローンは異なっており、深く掘り下げるとなかなか奥深いのが住宅ローンです。

今後、住宅ローンに関する知識の「基礎編」と、
実際に住宅ローン商品で着目すべき点、各人のライフスタイルで整理すべき事項について記述する「実践編」を記事にしていきたいと思います。
※基礎編は少々学術的なものなので、本質的に金融まわりに興味のない方には退屈かと思います。。

住宅ローンを金利決定方法で分けると3種類存在する。

住宅ローンを金利決定方法で以下の通り分類し、それぞれの金利決定方法を解説します。
・変動金利
・固定金利(一定期間、全期間含む)
・フラット35系固定金利

今回の記事は変動金利についての解説です。
変動金利を構成する要素について解説します。

変動金利タイプの住宅ローン

変動金利タイプの住宅ローンは借入期間の途中で、銀行の裁量で金利を変動させることができるタイプです。金利の上昇リスクは利用者側が取っているわけです。

変動金利=「短期プライムレート-優遇金利」

変動金利タイプの金利は各銀行の「短期プライムレート」を基準金利として、銀行ごとの基準で定められる優遇金利を差し引いた水準となります。

プライムレートとは、銀行が財務内容や業績がいい優良顧客に貸し出す際に適用する最優遇金利のことです。「短期」プライムレートは文字通り短期のプライムレートで、1年未満の短期貸し出しにおける最優遇金利です。
※金融の世界では一般的に1年未満を短期、1年以上を長期としています。

では短期プライムレートはどのように決定するのか

短期プライムレートは現在の仕組み上、市場金利のうち「無担保コール翌日物金利」に連動しています。無担保コール翌日物金利とは、金融機関同士の資金のやり取りを行なうコール市場における無担保での資金貸借のうち、約定日に資金の受払を行い、翌営業日を返済期日とするものにかかる金利のことです。
※かつての銀行預金や短期プライムレート等の金利は全て日銀の定める「公定歩合」と連動していました。1994年(平成6年)の金利自由化後、短期プライムレートは「無担保コール翌日物金利」(つまり短期の市場金利)と連動するようになったため、現在の短期プライムレートは「新短プラ」と呼ばれることもあります。

ではでは無担保コール翌日物金利はどのように決定するのか

1994年(平成6年)の金利自由化後、日銀は短期市場金利を誘導するオペレーション(公開市場操作)を通じて金融市場調節を行うようになりました。
さらに1998年(平成10年)からは、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、平均的にみて○○%前後で推移するよう促す」という形で「金融市場調節方針」の中で具体的に定めるようになっています。無担保コール翌日物金利はこの誘導目標の範囲に収まるように日銀が資金の量を調整しています。具体的には銀行券の発行・還収により日銀当座預金と銀行券が相互に形を変える形(銀行券要因)です。ちなみに日銀当座預金が変動する要因は他に金融機関の日銀当座預金と政府の間で財政資金の受払が行われる場合(財政等要因)があります。

また、無担保コール翌日物の上限としてかつての公定歩合である「基準貸付利率」があります。これは、日銀が予め定めた条件(貸付期間を1営業日とする等)に基づき、貸付先からの利用申込みを受けて、担保の範囲内で受動的に実行する貸付制度であり、2001年(平成13年)2月に導入されました。要するに無担保コール翌日物の代替として日銀が提供している貸付制度で、この利率が実質的に無担保コール翌日物の上限利率となるわけです。

一方、無担保コール翌日物の下限として当座預金の超過準備に付与される利息があります。これは日銀の「補完当座預金制度」(当座預金の「超過準備」に利息を付す制度)によるものです。
※いわゆる日銀のマイナス金利政策は、この「超過準備」の概念を見直し、日本銀行当座預金は3階層に分割して、それぞれの階層ごとにプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する政策です。

次回は実際の短期プライムレートの変遷と、最終的な変動金利水準について解説します。

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